大切な家具やこだわりの雑貨をいつまでも綺麗なまま使いたい――そう考える人たちに寄り添うコーティング塗料「BELAY」は、「美麗」な暮らしの頼もしいパートナー。この連載では、そんなライフ&ワークスタイルで知られるクリエイターの方たちとともに、「BELAY」の登場で変わるこれからの暮らしについて考えていきます。
第一回にご登場いただくのは、オムロンの体温計「けんおんくん」や万能フライパンの進化版「レミパンプラス」で知られるプロダクトデザイナー・柴田文江さん。「デザインの専門家に評価してもらえるのはもちろん嬉しいけれど、一般の方たちに“デザインのことなど意識せずに買ってみたけれど、使ってみたら意外によかったね”と思ってもらえるのはもっと嬉しい」と話す柴田さん。そんな彼女のご自宅に伺いました。
柴田さんといえば、丸みを帯びた、触れて優しいデザイン、美しく使い心地のいいデザインでおなじみ。ただ、新旧の名作デザインアイテムが並ぶこのリビングルームは、意外なほど硬派な印象です。非常にすっきりと軽やかで、生活感があまりないのに、一方でリラックスした雰囲気も。もの選びや空間作りで意識されていることはありますか?
柴田文江さん:デザイナーなので、空間でいろいろ実験してみたいと思っているんです。作るものには自分が表れるけれど、もの選びは一時的なものですから、自宅も事務所も、コンセプトを考えながら楽しんでいます。この部屋は来客も多いので、すっきり軽い空間にしようと考えました。シャープな印象の家具が多いのは、丸いデザインの反動もあるかな。リラックスした雰囲気は、ゲストが床にも座れるよう、テーブルを低くすることで生まれているのかもしれません。
空間が片付いていると快適だし、仕事もはかどるので、ものはあまり増やさないようにしています。ものが好きなので、あまり執着しすぎないように、ということは考えていますね。だから、ここに置いてあるものも、自分が本当に好きなものかというと、そうでもないんです。あと、ものの置き場所はきちんと決めています。事務所のスタッフに「あれを持ってきて」と電話で頼む時も、「引き出しの何段目のどこに入っている」と詳細に説明できるので便利ですよ。来客などで散らかっても常にデフォルトの状態に戻しておく、というのが、自分に課した条件なんです。
「デザインには自分が表れる」とおっしゃいましたが、柴田さんがデザインをする上で、常に意識していることはありますか。
柴田さん:「ものに緊張感を入れないこと」は意識しています。私より少し上の世代のデザイナーは、本当に美しいもの、白鳥のように綺麗なものを目指している人が多かった。でも、私は昔から少しノロくてボヨっとしているものが好き。シュッとした美しさよりも、フレンチブルのような、ちょっと面白い可愛さみたいなもの。学生時代から「あなたがどれを作ったか、すぐわかる。丸いから」って言われるほどでした。意識して四角く作ろうと思っても、どうしても丸みを帯びてしまうんですよね。
もちろん、私がデザインするものには手に持って使うものが多いので、丸い方が使いやすい、ということもあります。ただ、「柴田さんのデザインは女性的ですね」と言われることがありますが、それは自分では意識していないかな。ものには性別をつけたくないと思っているので。
これまでさまざまなプロダクトをデザインすると同時に、デザイン的な思考の提案なども行なってきた柴田さんですが、これからの活動において、野望みたいなものは持っていますか?
柴田さん:うーん、もっと自由にいろんなことができるようになりたいな。やりたい仕事も、やれていない仕事もある。まずはトータルディレクションを手がけるカプセルホテル「ナインアワーズ」を世界に持って行きたい。カプセルホテルにはそれまでいいものがなかったし、特にデザインが求められたりはしていなかった分野ですよね。その価値観を「都市生活にフィットする宿泊機能と新しい滞在価値を提供する」というコンセプトを立て、建築やインテリア、アメニティなども従来のカプセルホテルとは全く違うものにすることで、大きく変えていった。それと同じように、こういうものにデザインはいらないとか、二流だとか思われているようなものを、デザインの力で変えたい、新しい価値観を生み出したいという気持ちは強く持っています。
自由といえば、今後は家具もやっていきたい。海外メーカーとも最近仕事を始めているんですが、木工の技術を持ったメーカーと組んでみたいんです。作っている人とコミュニケーションを取りながら仕事がしたいので、できるだけ自社工場を持っていて、オーナーがものづくりを理解しているクライアントがいいですね。あと、実現するかどうかはわかりませんが、いつか自動車もやってみたい!
さて、ぱっと見たところではわかりませんが、この白いテーブルにはBELAYが塗ってあるんですよね。
柴田さん:そうなんです! 以前、このローテーブルに赤ワインの輪染みがついてしまったことがあって。なんとか頑張って落としたんですが、BELAYのことを知って、ああ、最初からこれを塗ってあればな、って思ったんですよね。お気に入りの家具を大切に長く使いたいのであれば、傷などがつく前に塗っておくといいかも。
あと、最初にお話ししたように、空間で実験をしてみたいという気持ちはいつも持っているんです。ここ10年は忙しくて、なんとなくこのまま来てしまいましたが、そろそろ替え時かな?とも思っていて。そうなると、今ある家具は誰かにあげたり、売ったりしないといけないでしょ? そんな時、BELAYでカバーしてあれば、綺麗なままで次に引き継ぐことができますよね。「家具は一生もの」という概念も今ではすっかりなくなってきているし、後々手放す可能性を考えれば、最初から塗っておいた方が賢明かもしれませんね。
柴田 文江
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、大手家電メーカーを経て有限会社デザインスタジオエス設立。iFデザイン賞 金賞(ドイツ)、レッド・ドット・デザイン賞(ドイツ)、毎日デザイン賞(日本)、グッドデザイン賞 金賞(日本)、DFAアジアデザイン賞 大賞(香港)など受賞歴多数。2014年より武蔵野美術大学教授。2018・2019年度グッドデザイン賞審査委員長。著書に『あるカタチの内側にある、もうひとつのカタチ』(ADP)がある。